この記事は「Call for Code Blog – Create a solution in response to wildfires while keeping sensitive data safe(2019å¹´5月3日公開)」の翻訳です。

機密データを保護しつつ山火事に対処するソリューションを構築する

私たちの地球は、どこに住んでいようと自然災害と人道的危機にみまわれる危険性を避けられない時代に突入しました。2018 年だけをとっても、カリフォルニア州の近代史の中で最悪の山火事、プエルトリコのハリケーン・マリア、フロリダ州のハリケーン・マイケル、インドネシアの津波、ナイジェリアの大洪水などの大災害が発生しています。

コミュニティーのニーズの複雑さに対処し、何層にも重なる緊急対応を調整するには、1 つのソリューションだけでは到底不可能です。統合されたソリューションのポートフォリオがなければ対応しきれません。統合されたソリューションを連携させることで、災害と被災者の特定、救助要請への対応、災害後の対処、そして最終的にはインフラストアクチャ―とコミュニティーの復旧開始が可能になります。スマート・テクノロジーと人工知能 (AI) を統合したソリューションというビジョンがなければ、緊急救援隊員たちが利用できるのは、まとまりのない個々のソリューションだけとなってしまします。こうしたソリューションを総動員させたとしても、大課題には対応できないでしょう。つまり、全体的な効果は、個々のソリューションの効果を合計したレベルにまで達しないということです。今年の Call for Code グローバル・チャレンジの課題は、能力を拡張すること、および離散した情報源を統合することを目的に、スマート・テクノロジー、モノのインターネット (IoT)、AI を含むポートフォリオを構築することです。しかも、機密データを保護して情報のセキュリティーを確保することも課題となります。

ビッグデータを活用するためにスマート・テクノロジーを使用する

災害復旧という状況にあってはスマート・テクノロジーによってビッグデータを活用できますが、通常、ビッグデータには機密データが含まれているものです。すべてのスマート・テクノロジーは例外なく、新しく生成されたデータを既存のデータにマッピングして統合しなければ機能しません。例えば、山火事の鎮火後は、被災地区と (通常は世帯単位での) 被害の大きさを迅速にマッピングする必要が出てきます。この 2 つの情報の間にある溝を埋めるには、AI と機械学習 (ML) を使用できます。具体的には、自律的に地図を作成するドローンから収集したデータと、能動的または受動的クラウドソーシングから収集したテキスト情報、ビジュアル情報、地理情報を融合させるという方法です。ここで課題となるのは、データを迅速にマッピングする一方で、機密データをクラウド内で保護された状態に維持するテクノロジーを開発することです。さまざまなデータ収集手法によって異種混合のデータが収集されることになりますが、スマート・テクノロジーでは AI と ML を使用して、機密データを危険にさらすことなく信頼度を評価し、不確実性を定量化します。

山火事の原因特定にスマート・テクノロジーを適用する

破壊的な山火事「キャンプ・ファイア」が発生する前に、スタンフォード大学の地球科学部の Noah Diffenbaugh 教授は、気温が上昇して乾燥が進んでいる傾向にあることから、山火事のリスクが高まっていると予測しました (「インディペンデント」紙、英国、2018 年 7 月 31 日)。山火事の場合、初期の火を対処できるうちに検出できるかどうかが問題となります。スマート・テクノロジー、ドローン、マシン・ビジョン、AI、ML によってデータを統合して分析すれば、事前に危険を特定できます。さらに、これらのテクノロジーを使用すれば、人間の活動データ (ソーシャル・メディア情報など)、空中のドローンによる検出データ、ビデオ・インテグレーションからのデータを取得して統合することも可能です。開発を進めることにより、AI、ML、データ・アナリティクスを使用して潜在的な危険をマッピングし、事前に緩和策を取れると同時に、個人情報が保護された状態に維持することができます。

昨年の Call for Code チャレンジで準優勝を獲得したチームの 1 つが機械学習を使用して作成した山火事対策を見てください。

政府、NGO、ボランティアの救助隊員の取り組みを調整するスマート・テクノロジー

救助隊員は、専門家やボランティアであることも、政府機関や人道支援組織の職員であることも、市民や軍人であることもあります。災害を発端にさまざまな組織が支援の手を差し伸べますが、こうした支援活動や関係グループの間での調整が十分に取られていないことは珍しくありません。この複雑な関係グループ層においては、個人向けのテクノロジーとスマート・テクノロジーによって「責任の分担」を整理することで、ロジスティクスの調整が容易になります。災害時の混乱の中では、スマート・プラットフォームも保護する必要があります。緊急時とその余波が続く間は、スマート・テクノロジーがアクティブなハブとしての役割を果たすことができます。つまり、緊急救援隊員が避難支援、世帯のニーズ、飲料水、道路の障害物撤去などに対応する際に、ハブとしてのスマート・テクノロジーにログインして、最も緊急性の高いニーズを把握することができます。自動ネット通知により、国際的な人道危機における調整が飛躍的に改善しました。これらのネット通知ではすべて、IBM の IBM Cloud をはじめとするクラウド・テクノロジーを採用しています。AI および ML ベースのシステムを開発することによって、緊急救援隊員やリソースを識別して現場での実際のニーズにマッピングすると同時に、この情報をリアルタイムで調整する技術ソリューションを提供できる可能性もあります。こうした技術的進歩と技術の力によって、調整を大幅に改善する方法を考えてください。

災害弱者の支援における不平等を緩和する

これまでに説明した複雑さに加え、もう 1 つ考慮しなければならない要素があります。それは、災害弱者です。高性能のソリューションでは災害弱者を見落としがちですが、自然災害はこうした人々により大きな影響を与えます。高齢者、障害者、低所得者などが携帯電話やインターネット接続といったテクノロジーに簡単にアクセスできる可能性は低いため、混乱時にスマート・テクノロジーによって災害弱者を救うのは難しくなりがちです。最近の国連報告と Christina Munoz および Eric Tate による記事によると、被害を受けやすいカテゴリーに分類される人々には、財政的支援であるかどうかを問わず、平等な支援が与えられていないということです。社会的不平等を緩和する力としてのテクノロジーには、機密データのセキュリティーを確保しつつ、こうした災害弱者を支援できる可能性があります。例えば、ソーシャル・メディアをモニタリングして分析することで、緊急救援隊員は困難の兆候を見せている高齢者、低所得世帯、障害者を検出できます。あるいは、テクノロジーへのアクセスが容易ではないとしたら、Project Owl の「ducks」 のようなテクノロジーを使用できます。ducks では、誰もが OWL 緊急ネットワークにログインして接続し、困っている人々の状況に関するフィードバックを提供できるようになっています。

災害救助を目的としたテクノロジーは、必ずしもテクノロジー中心ではなく、人間を中心としたものでなければなりません。人間中心のテクノロジーを使用して、個人情報保護の要件を不当に利用することなく、被災者の困難を軽減するための対応を特定し、優先順位を付けることを重点としたソリューションを作成する必要があります。テクノロジーには、ニーズが満たされる集団と満たされない集団との間の溝を埋める力があります。

災害対応策において新しいテクノロジーへの依存度が高まる中、対応策の中核となるのはデータであること、そして通常そこには個人レベルの機密データが含まれることを忘れてはなりません。災害対応テクノロジーの進歩において第一に考えなければならないのはデータの保護です。災害時に極めて重要なデータを失くしたとしたら、脆弱性が増幅し、災害への対応が悪化することになるでしょう。データ・セキュリティーが適切に確保され、データが暗号化されていれば、スマート・テクノロジーを使用したさらにインテリジェントな災害対応によって、災害時の対応時間の短縮化と災害シナリオの迅速なマッピングが可能になります。

IBM Cloud Hyper Protect Services

高度にセキュアな AI、ML、データ・アナリティクス・ソリューションを作成して実装するには、IBM Cloud Hyper Protect Services を利用できます。このサービスでは、皆さんのような開発者やデータ・サイエンティストが IBM LinuxONE をベースに作成された一連のクラウド・サービスを利用してクラウド・アプリケーションを構築できるようになっています。

IBM Cloud Hyper Protect Services が機密データを保護する仕組みについてご覧ください。

ソリューションを応募してください

テクノロジーを使用して自然災害に対応することに興味がありますか?IBM が共同で設立した Call for Code というグローバル・チャレンジでは、自然災害の対策、対応、復旧を目的とした持続的なソリューションを開発するよう、ソフトウェア開発者、データ・サイエンティスト、テクノロジストに呼び掛けています。

Call for Code 2019 では現在ソリューションの応募を受け付け中です。Ali Mostafavidarani 博士のようにイノベーションに挑戦してください。

Ali Mostafavi は、テキサス農工大の土木工学 Zachry 学部の准教授であり、Urban Resilience, Networks, and Informatics ラボを監督しています。彼の研究で焦点となっているのは、回復力を備えたコミュニティーのコンバージェンス・ナレッジの促進を目的に、人間、災害、構築環境を結び付けるネットワークのダイナミクスを分析、モデル化、改善することです。また、人工知能によるスマートな災害対応を取るために人間とマシンのインテリジェンスを統合することにも重点が置かれています。災害時に極めて重要な情報を提供するソーシャル・メディアに関する彼のレビューでは、災害の状況認知情報を効果的に取得する方法、自己組織化された仲間同士の支援活動をサポートする方法、組織が一般市民の意見を聞けるようにする方法に触れています。
彼は、全米アカデミーズの Gulf Research Program の NSF CAREER 賞と Early-Career Research Fellowship をはじめ、数々の賞を受賞しています。

今年のチャレンジで特にフォーカスしているのは、ヘルスケア、医療記録へのアクセス、災害弱者などです。今年のフォーカスについて詳しくは、開発者に向けた CTO からのレターをご覧ください。

Call for Code の呼び掛けに応じて今すぐソリューションの作成を開始してください。

参考資料

Call for Code の詳細については、developer.ibm.com/jp/callforcode にアクセスしてください。

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