ブロックチェーン・レジャー上に資産の証券化を実装する  

Hyperledger Fabric を使用して一連の非流動資産を取引可能な証券に統合する

| By Kalonji Bankole

Description

証券化とは、一連の非流動資産を取引可能な証券に統合するために使用できる金融プロセスのことです。非流動資産の一般的な例としては、簡単には売り買いできない住宅ローンが挙げられます。一方、取引可能な資産の例としては株や公債が挙げられます。証券化は、資産の流動性を高めて資本を解放することを目指す金融機関に役立ちます。このコード・パターンで紹介するアプリでは、IBM Blockchain Platform Starter Plan を使用して、ユーザーが資産、資産プール、投資家、証券の間の関係を作ったり確認したりするために使用できるダッシュボードを提供します。

Overview

あまりにも多くの長期非流動資産を所有する金融機関が、新しい投資に資本を解放しようとする場合、証券化のメリットを利用することができます。証券化は、簡単には売り買いできない資産に流動性を与える手段となります。資産をプールして証券に分割することで、容易に取引できるようになります。また、投資家にとっては、株などのリスクの高い投資に代わる手段になります。証券は公債に比較的似ていますが、証券の保有者は支払いを一括払いではなく、毎月受け取ります。

証券化がまだ広く実装されていないのはなぜなのかという理由の一部に、これが複雑なプロセスであることが挙げられます。さらに、通常は多数の関係者 (債権者、公債などの引受人、融資担当者など) の情報が必要になることも理由となっています。けれどもブロックチェーンを使用すれば、より透明性が高くなり、証券化のプロセスの多くを標準化して自動化することができます。例えばスマート・コントラクトを使用して、証券の資産プールの投資リスクを評価し、住宅ローンが滞納状態になっている場合は投資家/債権者に通知したり、証券の価値をリアルタイムで判断したりできます。

このコード・パターンでは証券化の例を紹介し、ブロックチェーン・レジャーを使用して証券化プロセスを追跡する方法を説明します。ここで紹介するアプリケーションは、React.js、Express.js、そして Hyperledger Fabric SDK を使用します。この 3 つを統合することで、ユーザーは証券化プロセスをシミュレートして、ブロックチェーン上で各種のトランザクションが処理される仕組みを理解できます。

このコード・パターンを完了すると、以下の方法がわかるようになります。

  • Hyperledger ブロックチェーン・ネットワークを IBM Cloud 上にデプロイする
  • Hyperledger Node SDK を使用して管理クライアントを作成し、登録する
  • スマート・コントラクトをデプロイして初期化し、資産、資産プール、証券、投資家を登録する

Flow

  1. 住宅購入者が原資産所有者のサービスを利用して、住宅ローンの融資を証券化します。
  2. 原資産所有者がアプリケーションをロードして、ブロックチェーン・レジャーを新しい資産で更新するためのリクエストを送信します。
  3. リクエストが Node.js Express バックエンドで処理されて、CRUD リクエストが JSON-RPC オブジェクトにフォーマット化された上で、トランザクション案として Hyperledger のピアに送信されます。リクエストにより、価値 540,000 米ドル、利率 3.3 パーセント、信用スコア 720 の住宅ローンが登録されます。信用スコアを使用して、潜在的投資者にとってのリスクを計算します。
  4. ピアは承認サービスを利用して、関連するスマート・コントラクトに対してトランザクション案をシミュレートします。この承認サービスにより、レジャーの現在の状態を前提としてトランザクションを実行可能であることが確認されます。無効なトランザクション案の例としては、既存の資産を作成するトランザクションや、存在しない資産の状態をクエリーするトランザクションが挙げられます。
  5. シミュレーションが成功すると、トランザクション案にピアのエンドーサーが署名します。
  6. 署名されたトランザクションは順序付けサービスに転送され、このサービスによってトランザクションが実行されます。この例の場合、新しく作成された資産が資産プールに追加されます。
  7. 更新後の状態が、ブロックチェーン・レジャーにコミットされます。
  8. 証券化 UI により、更新後のレジャーの状態がクエリーされて、更新された情報を使用してテーブルがレンダリングされます。
  9. 資産プールが証券に分割された場合、投資家はそれらの証券を売り買いできます。証券の価格は、レジャーの状態が変更されるたびに更新されます。
  10. 債権者がレジャーの状態を確認し、支払いの遅延または住宅ローンの不履行のリスクを判断します。大幅な変化が検出された場合、債権者によって証券の信用格付けが再計算され、レジャー内で信用格付けが更新されます。

Instructions

  1. リポジトリーを複製します。
  2. リポジトリーのコードベースをローカルにセットアップするか、IBM Cloud にデプロイします。
  3. IBM Cloud で Watson サービスを作成します。
  4. チェーン・コードをアップロードして初期化します。
  5. アプリケーションを起動します。
  6. サービス資格情報を取得します。
  7. アプリケーションを構成して実行します。

Related Blogs

Call for Code 準優勝者: AI を使用して改造の可能性を判断する PD3R

ネパールでエンジニアとして働く Nirmal Adhikari は、地震がもたらす惨状をじかに目にしました。彼はまた、被害状況を評価したくても、なかなかコミュニティーにアクセスできないフラストレーションも実感しました。 「バスや交通機関で現地に辿り着くことはできませんでした。アクセスが禁止されていたためです。大勢のエンジニアを配置しなければならなかったのですが、それには相当な時間がかかりました」。2015 年のネパール大地震を振り返り、Adhikari はこのように言いました。「このことが理由で、私たちは多くの人手を要することなく迅速に作業を行えるよう、何か対策を取らなければならないと思ったのです」。 Adhikari と、Build Change で働く彼の同僚たち (Lakshyana K.C.、Nicolas Ortiz、Shreyasha Paudel、Kshitiz Rimal) は、人工知能によって検査を自動化し、地震で住む場所を追われた人々がすぐに自宅に戻れるようにできないかと考えました。 彼らがチームとして作り上げたのが、この Post-Disaster Rapid Response Retrofit (PD3R) です。3D モデル画像で学習した AI に基づくこのソリューションによって、自然災害後に住居を追われた家族がすぐに構造工学上のアドバイスを受けられるようになる可能性があります。PD3R は 2018 Call for Code Global Challenge で準優勝作品として選ばれ、25,000 米ドルの賞金と The Linux Foundation による長期のオープンソース・サポートを獲得しました。 「地震が発生すると、住居が全壊するか、部分的に損傷を受ける可能性があります」と、Ortiz は言います。「PD3R で目的としているのは、再建または補強することが可能な住居を、人工知能を使用して短時間で評価することです」。 Call for Code Global Award 祝賀会の録画を見る チームは Watson Studio を使用して、2,000 点を超える画像をベースにカスタムの視覚認識モデルを作成しました。IBM Watson...

続けて読む Call for Code 準優勝者: AI を使用して改造の可能性を判断する PD3R

Call for Code 優勝者: モバイル・ホットスポットとダッシュボードによって災害発生後のコミュニティーを支援

昨年メキシコ・シティーでマグニチュード 7.1 の地震が発生したとき、Subalekha Udayasakar はインターネットへの接続を失うと、いかに無力であるかを実感し、その混沌を目の当たりにしました。 「大勢の人々がインターネットに接続できなかったため、救助の手を差し伸べることができなかったのです」と、彼女は言います。「それに、被害に遭った人たちが実際にどのような状況に置かれているかについても、まったく見当がつきませんでした」。 この体験を機に、Subalekha と彼女のチームメイト (Jonah Model、Katie Mathews、Gandharv Patil、Matthew Malin) は災害への対応と復旧の最中に市民と救助隊がオンラインでつながり続ける方法を生み出しました。 ハードウェアとソフトウェアで編成された、この Project Lantern というソリューションは、2018 Call for Code Global Challenge で最優秀作品に選ばれました。Project Lantern が依存するのは、低価格のハードウェアとソーシャル・データ、そして入手した情報と状況の変化を反映したリアルタイムのデータです。 災害復旧時にオフラインになったワイヤレス・ネットワークで、鍵ほどの大きさの Lantern というデバイスがポップアップ通信ハブの役割を果たします。この Lantern デバイスでは、カスタマイズ可能な Web アプリを使用してニュースを受信し、救助とボランティアを要請するとともに、地図ツールによってユーザーを避難所と飲料水や燃料を入手できる場所まで誘導します。このように、Lantern は極めて急を要する状況でコミュニティーの秩序を維持するよう設計されています。 Call for Code チャレンジに向けて、チームは IBM Watson を利用してオフラインで収集されたデータを解釈し、その結果を救助隊用のダッシュボードとして提示することにしました。現地のボランティア、危険にさらされている人々、訓練された難民救済ワーカーの間のコラボレーションは、IRIS (Intelligent Routing and Insights の略語) によって支援します。 「IRIS の役目は、災害時のあらゆるデータに加え、IBM Watson の機械学習機能、The Weather Channel からのデータ、そして公開されているその他すべての API...

続けて読む Call for Code 優勝者: モバイル・ホットスポットとダッシュボードによって災害発生後のコミュニティーを支援

Call for Code 優勝者: 緊急支援ネットワークで中断のない銀行サービスを実現

史上最大の地震の 1 つとして数えられる 2008 年の四川大地震が発生したとき、中国農業銀行 (ABC) は被災者たちに緊急支援と金融サービスを提供しようと試みました。 けれども、銀行カードや写真付き ID を失くすなどといった、いくつかの泣き所が災害によって生み出され、同行は思うように顧客にサービスを提供できませんでした。 「この 10 年の間、世界中で多くの自然災害が発生しています」。ABC 研究開発センターで副総支配人を務める Wang Yi の言葉です。「私たちは被災者への金融サービスを改善することを目指しています」。 こうしたサービスの改善を目的に、ABC の開発者たちは Call for Code の呼びかけに応じ、United Aid Net (UAN) を作成しました。UAN は、自然災害の発生時も復旧時も中断することなく金融サービスを提供するためのグローバル緊急支援ネットワークです。顔認識に基づく預金引き出しとブロックチェーンを基に構築されている UAN は、災害時に家族や友人との間で一時的に金融サービスを共有することを可能にします。 仕組み このソリューションを開発したのは、北京を拠点とするチーム Green Coder です。Dong Xiaojie、Liu Xu、Liu Bo、Huang Zhiming、Liu Jiajie からなるチームが開発したこのソリューションは、2018 Call for Code Global Challenge で最優秀作品に選ばれました。 「UAN は、金融機関ネットワークと家族ネットワークという 2 つのネットワークで構成されています」。ABC でアプリケーション・プラットフォーム開発ネットワークの副総支配人を担当する Xiaojie は、このように言っています。「現在、私は UAN...

続けて読む Call for Code 優勝者: 緊急支援ネットワークで中断のない銀行サービスを実現

Related Links

Blockchain for trusted transactions

IBM Cloud Garage with Blockchain を使用すれば、ビジネス・ネットワークの問題に連携して対処し、迅速にブロックチェーン・ソリューションを構築できます。

Blockchain Unleashed

IBM Blockchain Platform Starter Plan 上でネットワーク構築を開始する方法を学んでください。

Structure Finance Industry Group

証券化にブロックチェーンを適用して、改革の機会をつかんでください。

The Nest

証券発行者と投資家にとっての証券化の利点と欠点を調べてください。

Deloitte & Touche

「Speaking of Securitization」で、証券化について詳しく説明しています。

財務管理

証券化の利点と欠点について説明しています。

Moodys.com

「Demystifying Securitization」で、証券化について詳しく説明しています。