ブロックチェーンを使用したコーヒー取引: ブロックチェーンの真相

ブロックチェーンは、参加者間での商品、サービス、情報をネットワーク内でセキュアに交換する手段です。この記事では具体な例 (コーヒーのグローバル取引) を用いて、ブロックチェーンの中心概念を説明します。これには、参加者間で合意されたビジネス・ロジックを自動的に実行するスマート・コントラクトと、商品やサービスの品質と出所を保証できるようにする共有レジャーが含まれます。また、ブロックチェーンがコラボレーションを可能にし、新しいビジネス・モデルの誕生を促進する仕組みについても説明します。

誰の目にも留まるほど、ブロックチェーンが世界を変えることになるという記事が溢れていますが、そのような記事のなかに、実際にどのように世界を変えるかについて説明しているものはほとんどありません。私たちはこの記事で、この欠けている部分をある程度埋めて、皆さんがブロックチェーンの基本を理解できるようお手伝いします。

世界中で企業間や組織間の依存関係が強まっていく傾向にあります。他の企業に依存する組織が成功するためには、信頼できるパートナーシップが不可欠です。けれども組織によって、利害関係者、目標、ビジネス・ターゲットはそれぞれに異なります。商品、サービス、情報をセキュアに交換する手段を提供するブロックチェーンでは、ビジネスの当事者間で必要となる信頼を外部で管理するとともに、実行可能なルール (ブロックチェーンではスマート・コントラクトと呼ばれます) を収集して、それらのルールに従ってビジネスが行われるようにします。この仕組みにおいては、どの組織にも一方的にルールを変更する権限はありません。

このように外部で管理された信頼できるトランザクションは、新たなグローバル・ネットワークを実現可能にし、新しいビジネス・モデルを推進します。どの業界においても、重要なところに組織間の摩擦またはビジネス機会が存在するとしたら、それはブロックチェーン・テクノロジーを試験的に導入するのに絶好の場所です。ブロックチェーン・テクノロジーであれば、これまで信頼メカニズムがなければ実現するのは難しい、あるいは不可能だと判断されてきた組織間のコラボレーションを可能にすることができます。

以下の主な分野で実証されるブロックチェーンの価値を、コーヒーのグローバル取引を題材に見ていきましょう。

  • スマート・コントラクトによる自動化と信頼
    ブロックチェーンは参加者間で合意されたビジネス・ロジックを自動的に実行することで、摩擦を減らし、効率性を高めます。
  • 来歴
    ブロックチェーンでは不変の共有レジャーによって、商品やサービスの品質と出所を保証することができます。
  • プライバシー
    参加者が表示できるトランザクションの内容は、ネットワーク内でのその参加者の役割に応じて決まります。
  • 新しいビジネス・モデル
    さまざまなタイプの新しい参加者がネットワークに参加して、価値および新しい可能性を提供できるようになります。

ビジネス・ネットワーク

以下の地図に、コーヒー豆の売り買いを対象とした機能的ビジネス・ネットワークの例が示されています。

地図

地図上に示されているコーヒーの木のアイコンは、コーヒー豆の生産者を表します。生産者は、労働者を雇ってコーヒー豆を収穫し、それを販売して収益を得ます。コーヒー・カップのアイコンは、コーヒー豆の買い手を表します。買い手はコーヒー豆を購入し、そのコーヒー豆で淹れたコーヒーを顧客に販売して収益を得ます。飛行機は、注文されたコーヒーを生産者から買い手に配送していることを表します。

例えば、あなたはコーヒー豆の買い手 Curt’s Coffee だとします。まずは小さい利益を出すことを目指して、3 種類 (並、良、極上) のコーヒー豆を在庫に確保しています。あなたはコーヒー豆の買い手として、購入したコーヒー豆でコーヒーを淹れて、それを顧客に販売することで利益を出します。どれだけの利益を出せるのかは、販売効率と、使用するコーヒー豆の品質によって決まります。

コーヒーを販売して利益を出した後、あなたは極上品のコーヒー豆を使い切ったことに気付きました。「極上」のコーヒーの販売をさらに進められるよう、在庫を補充する必要があります。結局のところ、他の 2 種類のコーヒー豆よりも、「極上」のコーヒー豆で淹れたコーヒーのほうが 1 杯あたりの利益が大きいからです。けれどもまずは、コーヒー豆のサプライヤーを見つけなければなりません。

ブロックチェーンのない世界では、自分にとって有利な条件で高品質のコーヒー豆を販売してくれるコーヒー豆生産者を見つけるための仕組みが必要になります。その仕組みを通じて生産者を見つけられたとしても、それで終わりではありません。その生産者とコーヒー豆の価格、品質、数量を交渉する必要があります。サプライヤーは最高品質のコーヒー豆を配送すると約束するかもしれませんが、約束が守られる保証は何もありません。また、サプライヤーを信頼できるだけの十分な情報がないことも考えられます。

スマート・コントラクトによる自動化と信頼

このような場合に効果を発揮するのが、ブロックチェーンです。ブロックチェーンであれば、買い手と売り手の間の摩擦を減らし、効率性を高めることができます。それは、取引の当事者間で合意されたビジネス・ロジックが、自動的に実行されるようになっているためです。

ブロックチェーンでは、あなたがコーヒー豆の取引条件として同意する内容を体系化したスマート・コントラクトに、あなたとサプライヤーの双方が従うことになります。スマート・コントラクトとは、契約の交渉や履行を促進、確認、または強制することを目的とするコンピューター・プロトコルのことです。ブロックチェーンのユーザーは、通常は Web アプリケーションまたはモバイル・アプリケーションという形でブロックチェーンを使用するという点では共通していますが、そのユーザー・エクスペリエンスはユーザーごとに異なります。それは、ネットワーク内でそれぞれのユーザーが各自の役割を果たしやすいように設計されているためです。

このコーヒーの例では、モバイル・アプリケーションを使用して、コーヒー豆の購入にスマート・コントラクトを使用するようリクエストします。スマート・コントラクトの条件は、購入するコーヒー豆の品質 (極上)、購入する数量 (40 ユニット)、承諾できる価格帯 (最大 7 ドルの単価) を選択して設定します。設定したスマート・コントラクトを送信すると、そのスマート・コントラクトがネットワーク内に登録されて、ブロックチェーンのロジックによってその契約条件を受け入れる生産者とのマッチングが試みられます。

スマート・コントラクトによって参加者間の信頼レベルは引き上げられることになります。それは、ビジネス・ネットワーク内で組織がコーヒー豆の売り買いに参加するにはスマート・コントラクトが唯一のメカニズムとなり、スマート・コントラクト内にコード化された取引の実施方法を決めるビジネス・ルールは、どの組織も一方的に変更することができないからです。組織がビジネス・ネットワークに参加する際は、その組織にスマート・コントラクトの内容が表示され、組織が前もってネットワークに参加するかどうかを決定できるようになっています。

あなたが提示した取引条件を、例えば、Big Beans という企業が受け入れたとします。Big Beans はあなたが指定した 40 ユニットのコーヒー豆を単価 6 ドルで配送します。この単価は、必然的に、あなたが希望した最大価格よりも低く、Big Beans が許容する最小価格よりも高くなっています。取引が完了すると、そのことがあなたの購入履歴に記録されます。

あなたは直ちに、次の生産者との取引を開始します。コーヒー豆を入荷するために料金を支払うごとに、コーヒー豆の数量は増える一方、利益は減ります。販売量を増やして利益を上げ続けるために、あなたはさらにコーヒーを淹れます。

極上品のコーヒー豆が十分に入荷されたという理由でスマート・コントラクトを破棄することにした場合は、いつでもスマート・コントラクトを破棄できます。破棄しなければ、この特定のネットワーク内のスマート・コントラクトはあなたに合った取引相手を探し続けるように設計されています。

来歴

このコーヒー・ビジネス・ネットワークはグローバル・ネットワークであるため、世界中で取引が行われていて、買い手と売り手の間のつながりが次々と生まれています。このビジネス・ネットワーク内で行われるトランザクションはすべて共有レジャーに記録されます。この共有レジャーの正確なコピーは、ネットワーク全体の参加者たちが保持し、ブロックチェーン・プラットフォームによって自動的に同期した状態に維持されます。

以下の図に、このネットワークの共有レジャーに記録されるようなレコードのいくつかを示します。これを見るとわかるように、レジャーにはトランザクションに関するかなり詳細な情報が記録されます。

トランザクションを示す図

共有レジャーは不変であるため、参加者はコーヒー豆の出荷の出所を追跡できるとともに、コーヒー豆の品質は保証されます。例えば、あなたのトランザクションによって、共有レジャーに「買い手 Curt’s Coffee と生産者 Big Beans の間で、高品質のコーヒー豆を単価 6.00 ドルで 40 ユニット購入する取引が成立」と記録されたとします。この場合、共有レジャーには後日、「取引完了 – Curt’s Coffee が出荷品を受領、Big Beans が支払いを受領」と記録されます。

重要な点として、上の図に示されている共有レジャーの内容は、世界的コーヒー規制機関 (このような組織が存在する場合) に表示される詳細レベルの内容であることに注意してください。ビジネス・ネットワーク内で規制機関としての役割を果たす組織は、参加者全員がルールに従っていることを確認するために、通常はビジネス・ネットワーク内のさまざまな参加者とトランザクションのすべてを表示できなければなりません。

ブロックチェーンを利用しないとしたら、規制機関は恐らく毎月の終わりに参加者全員からすべてのアクティビティー・レポートを集めることになるでしょう。その後、その月に行われた複雑に入り組んだトランザクションを整理するためにフォレンジック調査を行って、誰かが自分を有利に見せ掛けるために (または収入を増やすために) 情報隠匿を試みていないかどうかを突き止めようとします。

けれどもこの例の場合は、ブロックチェーンのプロパティーに従って、あらゆるビジネス・トランザクションが分散型レジャー内に記録されます (そしてビジネス・ネットワーク全体で分散レジャーの個々のコピーがホストされます)。そのため、このネットワーク上の誰一人としてネットワーク上のレコードを変更することはできません。また、レジャー上の個々のあらゆるレコードに関してコンセンサスが確立されています。したがって、ビジネス・ネットワーク内の参加者全員が、レジャー内に記録されているデータは信頼できるものであると納得できます。さらに、規制機関はビジネス・ネットワークの状態を把握する際にこの最新情報を頼りにできます。

プライバシー

レジャー上に記録されたトランザクション内の情報を調べると明らかにわかるように、レジャーには極めて機密性の高いデータが記録されます (購入されるコーヒー豆の単価、買い値と売り値、数量など)。現在行っている取引の内容や希望価格などといった情報は、競合他社には知られたくないはずです。世界的コーヒー規制機関 (存在する場合) はこれらの詳細をネットワーク全体にわたって把握できなければならないとはいえ、競合他社がこの機密情報にアクセスできないようにするには、プライバシーを考慮する必要があります。

具体的には、ネットワーク上の買い手と売り手のそれぞれが表示できるのは、自分が利害関係者となっているトランザクションの内容だけにして、他の買い手と売り手の機密情報には不正にアクセスできないようにします。以下の図に、あなたが Curt’s Coffee として表示できる、共有レジャーの制限された表示内容を示します。

トランザクションの制限された表示内容を示す図

このビジネス・ネットワークに参加する際は、オンボーディング・プロセスに従うことになっています。このプロセスはビジネス・ネットワークによってそれぞれ異なりますが、ビジネス契約条件に同意しなければ、ネットワークには参加できません。ネットワークへの参加が許可されると、証明書と鍵の一式が渡されます。証明書によってネットワーク内での ID が与えられます。また、これらの鍵を使用することで、共有レジャー内にある特定のフィールドの暗号を解除して特定の情報を確認できます。最も重要な点は、参加者が表示できるレコードは、その参加者に関係するレコードだけであることです。例えば、あなたに関係するレコードでは、あなたが何杯のコーヒーを淹れたのかを確認できます。また、これまでに取り引きしたことのある特定の生産者の履歴を調べ、過去のレコードに遡ってその生産者から配送されたコーヒー豆の品質や収穫時期を追跡することもできます。

このビジネス・ネットワーク内の参加者の多くは、共有レジャーのコピー 1 部をローカル・データベース内に保管しています。それらのコピーは配布元のレジャーによって同期した状態に維持されています。あなたのデータベースには、データベースをどのように設定するかによって、レジャー内のあなたに関するレコードだけを保管することも、あらゆるレコードを保管することもできます。当事者だけがトランザクションの内容を確認できるよう、ある特定の参加者と専用のレジャーを共有することもできます。また、データベース内に共有レジャーをまるごと保管し、あなたに表示が許可されていない部分が暗号化によって保護されていることを実際に確認することもできます。参加者は、ネットワーク内での役割に応じて、その参加者に関連するトランザクションの内容を表示できるようになっています。

レジャーのコピーを自身でホストすることを望まない組織は、レジャーをホストしている組織が公開する API を介してビジネス・ネットワークにアクセスできます。ホスティング組織はこのサービスに対して料金を請求します。この仕組みは、その組織にとって追加の収益になるとともに、ブロックチェーンによって実現可能なビジネス・モデルを表します。

新しいビジネス・モデル

ブロックチェーンに関して興味深い点の 1 つは、これまでは可能でなかったような活動を実現できることです。ブロックチェーンによって、新しいビジネス・モデルを誕生させることができます。

例えば、ブロックチェーンによって、これまでにはなかった新しいタイプの参加者をビジネス・ネットワークに引き入れられるようになるでしょう。一例として、グルーバル・コーヒー・ネットワークに「認証機関」を引き入れましょう。認証機関は、生産者または買い手の実務を分析し、それがその認証機関の標準を満たしていれば、生産者または買い手にお墨付きを与えます。以下の地図では、これらの機関が、丸めた書類のようなアイコンで示されています。

トランザクションを示す図

共有レジャーを調べると、新しい参加者のエントリーが記録されていることがわかります。例えば、「認証機関 Organic Bean Buyers がネットワークに参加」、「コーヒー評価機関 Taster’s Inc. がネットワークに参加」といったエントリーです。この情報は、ネットワーク上の他の参加者に公開されて可視になります。

生産者側からすると、認証機関とは、最新の環境基準に従っているかどうかを評価する環境保護団体や、生産者がフェア・トレード・コーヒーを販売しているかどうかを判断する公正取引慣行団体を意味します。生産者はこれらの機関に認定を申請できます。認定されれば、環境保護団体認定の生産者であること、あるいは公正取引慣行団体認定の生産者であることを証明して、より多くの買い手を引き付けることができます。買い手は、該当する機関がレジャーに添付した認定証が不正防止の変更不可能な形になっていて、生産者がそれを変更できないことを見て取れます。したがって、買い手が生産者の言葉を信じるしかないという状況はなくなります。

コーヒーを顧客に販売する買い手側からすると、認定証をもらうということは、販売するコーヒーの味に対して料理批評家からの称賛を得るようなものです。その批評家が社会的な信認を得ている場合は尚更のこと、批評家の称賛を得れば、コーヒーの売り値を上げられることも考えられます。ブロックチェーンでは、レジャーを改ざんして、得てもいない称賛を得たように見せ掛けることはできないため、批評家から称賛を得たことを証明できます。

認定を取得しようと試みるたびに、それがレジャー上に記録されるようにすることもできます。これにより、他の参加者は、実際に認定を取得するまでにあなたが何回取得を試みたのかがわかります。認定を取得すると、認定機関により最高の味のコーヒーであることが認められたという証拠が記録されます。これで、自信をもって顧客にコーヒーを販売したり、極上品のコーヒーであることを宣伝したりできます。次にコーヒーを淹れるときは、あなたはさらに利益を得ることになります。認証を取得して、コーヒー 1 杯あたりの料金が上がったためです。

まとめ

ブロックチェーンは、組織間の全体的な信頼レベルを引き上げることによって、ビジネス・ネットワーク内で生じる摩擦を減らすようにするためのものです。ネットワークの参加者たちは、取引の当事者間で合意されて、一方的に変更できないスマート・コントラクトが実行されることを頼りにします。参加者たちはビジネス・ルールの内容とトランザクションを完了するために実行されたビジネス・ロジックの内容を表示することができるため、参加者にとって透明性のある取引になります。ブロックチェーンでは、規制機関や透明性を必要とする他の参加者がレジャーの内容を表示できるとは言え、プライバシーを確保して、さまざまなタイプの参加者が各自に関連する特定の内容だけを表示できるようにすることができます。

ブロックチェーンをベースとしたビジネス・ネットワークの価値を理解した今、ブロックチェーンを利用する機会が見えてきたことでしょう。例えばビジネス・ネットワーク内で参加者とトランザクションに関与していて、そのネットワークに信頼が欠けているといったことはありませんか?既存のブロックチェーン・ネットワークが形成されていて、そのネットワークに参加することもできるかもしれませんが、それよりも高い可能性として見込めるのは、他のいくつかの組織をまとめて、新しいビジネス・ネットワークの創始者になることです。

ビジネス・ネットワークの創始者になれば、そのネットワークに誰を参加させるか、参加するにはどのような基準を満たす必要があるかについて決められるため、多くのメリットがあります。その一方で、人々が参加したくなるようなビジネス・ネットワークをセットアップして、参加することからメリットを得られるよう参加者にインセンティブを与えるという責任もあります。この記事で例として取り上げたコーヒー・ビジネス・ネットワークは、大規模な買い手と生産者によるグループがセットアップすることも、関係者のすべてが利益を得られるようにコーヒー産業での取引方法の改善を模索する一連の政府機関がセットアップすることもできます。可能性は無限大です!